一部の歯科にて「ヒールオゾン」という虫歯治療方法をお勧めされることがあります。
様々な歯医者のサイトなどでは「安全」「最新医療」などと言ってオススメしてきますが、本当に安全なのでしょうか?
目次
ヒールオゾン治療法とは「オゾンを歯に照射」させる治療方法
ヒールオゾンとは「オゾン」という物質を歯に当てて殺菌する虫歯治療方法。オゾンで殺菌された歯は再石灰化により虫歯が自然治癒させていきます。
オゾンと聞くと、オゾン層を思い浮かべる人もいるでしょうが、あのオゾンと同じです。
オゾン(化学式「O3」)は殺菌能力に優れており、医療や食品、衛生の分野で広く活用されています。その効果はプールや水道水の消毒用に使用されている塩素の7倍!
その為、衛生の分野では水道の水の殺菌を塩素の代わりに利用している国もあるほど。日本も一部の自治体ではオゾンを利用しております。
では、歯の分野ではどうでしょうか?
ドイツのカボ社(KaVo社)が虫歯治療用としてオゾンを利用した装置「ヒールオゾン」を販売しました。
この装置を使い、虫歯にオゾンを数十秒照射することで虫歯菌が死滅。さらに歯の再生が促されるのです。
なお、このカボ社は日本でも医療メーカーとして営業・販売をしています。
- ヒールオゾンは「オゾン」を歯に当てて殺菌する方法
- オゾンは殺菌に優れており、医療や食品の現場で使用されている
- 始めて歯に利用できる機器を販売したのはドイツのカボ社
ヒールオゾンの効果は現状疑わしい
では、このヒールオゾンは虫歯治療に最適なのでしょうか?
実はこのヒールオゾン、日本では保険のおりない「未承認治療」に該当しています。なのでヒールオゾンで虫歯治療を行った場合、支払い料金が5000円以上にもなってしまう恐れが非常に高い。
更に、ヒールオゾンの開発会社であるカボ社は2010年にヒールオゾンの販売を停止しています。
これにはいくつか理由があります。
「虫歯に効く」と明確に言える根拠に乏しい
実は、ヒールオゾンが虫歯に対して効果があるという根拠は非常に乏しいです。
世界中の臨床試験を調査・分析・評価している「コクラン共同計画」はヒールオゾンに対する虫歯治療を「下のように評価しています。
虫歯をオゾンガスで治療しても虫歯の進行を止めたり治療したりできるという信頼しうる根拠は無く、オゾン療法を現在の歯科の治療法の代替手段として考慮すべきではない
これは「発表された論文に主観が入っている(=結果ありきの論文)」「被験者数不足」「統一されていない測定基準」といった問題があるから。
「そのようなものを治療に使用するのはいかがなものか?」という歯科医師が多かったので、あまり普及しませんでした。
効果のある人の状態が限られている
もうひひとつの要因として「効果がある人が限られている」から。
実は、ヒールオゾンで治療可能な虫歯は初期状態だけ。この場合だとヒールオゾンよりも既存の治療法のほうが下記の点で優れています。
<既存の治療法のメリット>
- 医師が慣れている=医療事故の可能性が低い
- 保険適用で済む=患者の支払うお金が少なくて済む
- 確実性が高い=確実な根拠があるのでしっかり治療できる
- わざわざ専門装置を買わなくて済む=ヒールオゾン装置は高い
こういった事情から、個人的にはあまりヒールオゾンによる治療はオススメしません。
- ヒールオゾンは未承認治療であり支払いが「5000円以上」になる恐れがある
- オゾンによる虫歯治療は根拠に乏しい
- ヒールオゾンに対して効果があるのは「初期の虫歯」だけ
ヒールオゾンの副作用
ではヒールオゾンで治療した場合、副作用はあるのでしょうか?
結論を述べると、「ヒールオゾンを使用した場合、理論上副作用が起きる可能性があるが、今のところ報告はない」とのこと。
オゾンは殺菌能力が高い代わりに毒性もあります。咳やめまい、呼吸困難、麻痺、倦怠感、神経の異常などが代表的な症状ですね。
現在これら症状を訴えた人はいませんが、頭の片隅にでも覚えておいてください。
【まとめ】わざわざヒールオゾンで虫歯治療はすべきではない
過去には「ヒールオゾンは歯を削らない新しい虫歯治療の方法」ともてはやされたことがあります。
ですが、「保険適用外」「根拠に乏しい」といった事情から多くの歯科では利用されていません。
個人的には沽券適用外で治療させお金をたっぷり支払わせたいという歯科医の都合が見え隠れする治療方法だと思います。
「歯を削らない」と言っても、初期の虫歯なら多少削ってもすぐに再生しますし確実性があります。
虫歯を治療するなら「保険適用内」で十分ですよ。
ちなみに、虫歯予防としてはキシリトールやマスティックが配合されたガムがいいとされていますので、虫歯治療中ならぜひご活用ください。