虫歯や歯周病などに効果が期待できると少しずつ話題になっている「マスティハ(マスティック)」。

ですが、実際にどんな効果があるのか?どこで購入できるのかわからない人が多いと思います。

そんな人の為に、マスティハの効果効能から、その根拠となる研究や歴史的背景、購入方法などをご紹介しましょう。

マスティハはギリシャのヒオス島でのみ自生している樹木

ヒオス島の位置

ヒオス島の位置

マスティハとは、ギリシャのヒオス島に自生している樹木と、それからとれる樹液のことを言います。日本では樹液を「マスティハ」で樹木を「マスチックノキ」と分けております。

マスティハの学名は(Pistacia Lentiscus var. Chia)。日本では「マスティハ(mastiha)」もしくは「マスティック(mastic)」という名称で知られています。

ヒオス島はギリシャに所属していますが、10km先にあるトルコと気候が似ています。

マスティハの木はヒオス島の中でも南部にしか生息しておりません。

常緑木で一年中成長します。40~50年かけて高さが3mほど成長しますが、マスティハの樹液が取れるの5年目からで、最大収穫がかのうなのは15年目~70年目。

1つの木から年間150~180グラムしか取れません。2キロほど採取できる木もあるようですが非常に稀。

マスティハの木

マスティハの木

一応、マスティハの木はヒオス島以外にも地中海沿岸に植えられていますが、「マスティハ」という名称で販売が出来るのはヒオス島のものだけ。

これはEUの原産地呼称保護(PDO)、ようは地方ブランドとして保護されているからです。

なぜ保護されているのか?

その理由はヒオス島のマスティハには世界最古の医薬成分効果があるからです。

2500年前から使われている「最古の口腔衛生グッズ」

ヒポクラテス

ヒポクラテス

マスティハは今から2500年ほど前の古代ギリシャから医薬品として扱われてきました。

当時のギリシャで最も優れており、西洋医学の聖医と呼ばれる「ピポクラテス」(AD460年頃~AD370年頃)が「マスティハには消化器系の予防や風邪、虫歯予防に使用できる」と発表。その効果から「神の涙」という二つ名が生まれました。

また、薬理学と薬草学の父と言われるディオスコリデス(BC40年~90年頃)の著書「ギリシア本草」においても「消毒効果が高い」と記載されています。

それ以降、多くの人がマスティハの樹液をガムにして噛んだり、ワインの材料にして飲む人が増えました。

ローマ帝国第23代皇帝であるヘリオガバロス皇帝はマスティハとワインを混ぜてたものを愛用していました。

この時、初めて歯の健康の為に噛む「ガム」という概念が誕生しました。つまり世界最古のガムがマスティハなのですよ。

よく、ゲームで「エリクサー」という回復アイテムがありますよねファイナルファンタジーやテイルズシリーズなど)。大抵の場合体力を全回復する効果があります。

このエリクサーは実際に存在する薬草酒なのですが、その成分の中にもマスティハは配合されています。

キリスト教がヨーロッパ中に広がって以降、「神の涙」という二つ名は「キリストの涙」変化していきました。

マスティハの樹液

マスティハの樹液

産業革命以降、医学が発達するにつれていったんマスティハは忘れ去られますが、現代になり「マスティハの消毒効果」が再度発見。

イギリスのノッティンガム大学が研究した消毒効果の論文は世界で最も権威のある医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」にも掲載されるほど。

最近では虫歯や歯周病菌の殺菌効果も期待されており、今後の発展が記載されています。

新聞記事

マスティハの研究に関しての新聞記事

マスティハの判明している効果・効能

現在のマスティハは様々な分野で活躍しています。料理のスパイスや口腔衛生、化粧品などなど。

ではどんな効果・効能があるのでしょうか?

マスティハの効果・効能

<マスティハの効果>

  • 殺菌
  • 消毒

<マスティハの効能>

  • アルコールから胃を守る(料理)
  • 老化の防止(化粧品)
  • 過剰な皮脂を防ぐ(化粧品)
  • シワを防ぐ(化粧品)
  • ニキビを防ぐ(化粧品)
  • 保湿(化粧品)
  • 虫歯菌の殺菌(歯科)
  • 歯周病菌の殺菌(歯科)
  • 糖尿病予防(薬学利用)
  • コレステロールの抑制(薬学利用)
  • 火傷や凍傷といったケガに対する治療(薬学利用)

マスティハの効果に関する科学的研究結果

マスティハは様々な研究があります。今までどんな研究がなされたのでしょうか?

歯に対しての効果を中心にご紹介しましょう。

成分分析

マスティハの成分を液体の時にGC法およびGC/MS法という標準的な方法で分析したところ、以下のような成分が配合されているのがわかりました。

精油 (α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセン、リモネン、β-カリオフィレン) 、苦味質、タンニン、ミリセチン、ケルセチン、ケンフェロール、キナ酸、シキミ酸など

主成分は精油 (α-ピネン、β-ピネン、β-ミルセン、リモネン、β-カリオフィレン)。

※固まった樹液状態では成分分析が困難の為調査は行われていません。

参考:Chemical composition and antibacterial activity of the essential oil and the gum of Pistacia lentiscus Var. chia.

主成分の効果は以下の通りです。

主成分の成分説明と効果
  • α-ピネン・・・大脳皮質に働き、血行促進やリラックス効果を得られる。ヒノキやパインに多く含まれている。
  • β-ピネン・・・皮膚のコラーゲンや保湿性を保つヒアルロン酸などの物質を増加させる。バラやパセリにも含まれている。
  • β-ミルセン・・・心地よい香りがする成分。防腐作用、殺菌作用も備わっている。月桂樹や松科、ハッカなどにも含まれている。
  • リモネン・・・血流増加作用、エストロゲン様作用、鎮痛、血流増加、利尿、血糖値低下、血圧降下など。
  • β-カリオフィレン・・・抗炎症作用のある成分。大麻やラベンダー、黒コショウにも豊富に含まれている。

<その他の成分>

  • タンニン・・・消臭効果のある成分。柿やブドウ、緑茶に含まれている。
  • ミリセチン・・・抗酸化作用を持つ。心臓や血管に関する病気の予防に役立つ。ワインやお茶に多く含まれている。
  • ケルセチン・・・抗酸化作用、抗炎症作用、強い血管弛緩作用を持つ。タマネギやソバに多く含まれている。
  • ケンフェロール・・・抗酸化、抗炎症、抗微生物、抗がん作用を持つ。イチゴ、リンゴ、ブドウに多く含まれている。
  • キナ酸・・・抗酸化作用を持つ。キナという植物の他にコーヒー豆に多く含まれている。
  • シキミ酸・・・抗酸化作用を持つ。インフルエンザ治療薬「タミフル」の原料でもある。シキミで発見されたが、様々な植物に含まれている。

抗菌効果の秘密

成分分析を行った後、「どの成分がマスティハの殺菌効果があるのか?」も調べました。

3種類の細菌を用いて実験を行ったところ、各細菌によって活動している成分が異なっていました。

なので、精油の成分すべてが各細菌に対し柔軟かつ相互的に働いているという事がわかりました。

虫歯・歯周病菌に対する効果

マスティハは歯に対する効果が盛んに行われています。

マスティックガムは口腔内細菌の増殖を抑制する」という論文では、「マスティックガムには塩化ベンゼトニウムと同程度の細菌抑制効果がある」と結論づけています。

塩化ベンゼトニウムはうがい薬の主成分。つまり「マスティックは医薬成分と同レベルの効果」が期待できるのです。

スティックガムは抗プラーク剤として有用である」という論文にて、プラーク(歯周病の原因)に対して効果があることをいち早く判明させています。

歯科学会の専門誌でも様々な研究事例を交えて「マスティハのオーラルケア効果」を紹介するほど。

口臭効果

マスティハは虫歯や歯周病だけでなく「口臭効果」も期待できます。

神奈川歯科大学の発表した「マスティックオイルによる口臭抑制効果」では、歯周病が放つ悪臭(硫化水素やメチルメルカプタン)の発生を抑制していることがわかりました。

残念ながら今のところ明確な理由は判明していないですが、殺菌効果の結果である可能性が高いと思われます。

マスティハの歴史~神の涙をめぐる争い~

「神の涙」と例えられるほどの効果のあるマスティハですが、その貴重性からさまざまな歴史が存在しています。

古代ギリシャ時代~紀元前500-紀元前400頃~

先ほども説明しましたが、マスティハが利用されたのは今から2500年前の古代ギリシャ。ピポクラテスが「虫歯や健康にいい」と発見したことによって一般的に使用されるようになりました。

2500年前と言われてもピーンと来ないかも知れません。同じ時代の偉人として哲学者「ソクラテス」が生きていたころですね。ようは哲学や医学の基礎が誕生したころです。

この時の使用方法は「ガム」かリキュールとして飲む、料理に入れるなど。これは現在でも続いており、現地ギリシャでは料理としての使用がメイン。

マスティハの消毒や治癒効果は非常に重宝されました。というのも、この時ギリシャはペロポネソス戦争という周囲を巻き込んだ大きな戦争に突入していたから。

兵の治療や消毒にもマスティハは利用されていましたが、結局ギリシャは敗戦。のちに北方で誕生したアレクサンドロス率いるマケドニアによって滅ぼされました。

マケドニア時代~紀元前400-紀元前150~

マケドニアはギリシャのみならずペルシア(イラン)も打倒し大帝国を築きます。この時にマスティハはギリシャだけでなく中東にも利用されるようになりました。

1972年にイラクの法律によって規制された以外では現代でも中東ではマスティハ(特にガムや調味料)は人気です。

東ローマ帝国(ジェノヴァ共和国)時代~395-1435~

少し時代が飛んで14世紀。ギリシャは東ローマ帝国に支配されていましたが、ヒオス島は「ジェノヴァ共和国」(国家みたいなことのできる銀行)が支配していました。

これは東ローマ帝国がジェノヴァ共和国に領土を譲渡したため。

この時、ヒオス島はトルコとの戦争の最前線であり、ちょくちょくトルコ帝国(現トルコ)に襲われていました。

島を守る為に全土を厚い要塞のようにしたのですが、マスティハの周りは特に徹底的に固めました。

なぜトルコはヒオス島を攻めたのか?

ヒオス島がトルコと近かったという理由もありますが、「マスティハが高値で売れた」からという事情もあります。

ヒオス島を管理していた総督は、東ローマ帝国へのマスティハの輸出で「12万もの金貨」をため込んでいたのです。

そんな要塞化したヒオス島ですが、1566年にオスマントルコによって支配されてしまいます。

トルコ帝国時代~1566年-1830年~

オスマントルコに支配された後、品質のいいマスティハはトルコへ貢がなければならなくなります。

1822年、当時ギリシャが独立をかけた戦争(ギリシャ独立戦争 1821-1829年)が行われていたのですが、その一環としてヒオス島でも独立運動が行われていました。

当然トルコが鎮圧に乗り出すのですが、その結果ヒオス島民の人口は10万人から2000人にまで減少。マスティハの栽培どころではなくなります。

ですが、このことがきっかけでヨーロッパ各国でギリシャ独立の声が上がり1830年にギリシャが独立。ヒオス島も同時にギリシャ領に戻ったのです。

近代~1830年以降~

マスティハは伝統技法によって収穫・製造される

立地的には第一次世界大戦でギリシャとトルコが再度戦争が行われましたが、ヒオス島は守られ、マスティハはほぼ安定して栽培されていました。

ですが1972年、マスティハの最大利用国の一つであるイラクが法規制によりマスティハのお酒が停止。それ以降マスティハの需要は低下してしまいます。

1992年、EU(欧州連合)が発足したとほぼ同時に「原産地名称保護制度(PDO)」が制定。これにより「原産地で生産されている」「伝統技法によって生産されている」ものに関してEU全体でブランドを守るようになりました。

更に2015年にはユネスコ無形文化遺産にも認定。これによりマスティハは一気にブランド価値を高めます。

更に、マスティハに関する科学的に研究が行われるようになり、過去に言われていた効果効能が殆ど証明された結果、世界中で注文が来るようになりました。

現在のマスティハの状況

マスティハの収穫風景

マスティハの収穫風景

現在でも伝統的な手法によりマスティハは生産されています。

多くのヒオス島民がマスティハの生産にかかわっており、7月~10月の収穫期になるといたるところで忙しそうな人を見かけます。

男性がマスティハの樹脂を収穫後、女性が自宅や工場にて手作業で綺麗に削ります。

綺麗にしたマスティハはEUにも許可されているマスティック生産者協会(協会自体は1938年に設立)によって全部買い取られ、世界中に販売されているのです。

ヒオス島では様々なマスティハ商品が販売されていますが、最も多いのが食べ物。

マスティハを利用したクッキーやチョコレート

現地ではマスティハを含む様々な商品を目にすることが出来ます。

日本で手に入るマスティハ商品(販売店)はどこ?

そんなマスティハですが、日本でも少しずつですが販売されています。「マスティハ」もしくは「マスティック」という名称でギリシャからの直営店が販売中です。

ですが、流通や販売経路が限られているので普通の人はなかなか手に入らないのが現状。

最近になってやっと本格的なマスティハが使用されているガムが販売され始めましたので、虫歯などが気になる方は少しのぞいてみてはいかがでしょうか?

商品紹介文では法律の関係上「歯周病や虫歯が治る」とは書かれていませんが、マスティハを利用しているので安心してご利用ください。